2016年度 慶應法科大学院 民法 起案
http://www.ls.keio.ac.jp/2_2016ron1.pdf
1.EはCに対し、本件越境部分につき所有権に基づく返還請求権により建物収去土地明渡し請求 認められるか
2.Cの反論
(1)CはEに対し自己の賃借権を対抗しうるか。
しかし、本件越境部分につきAは無権利であるからAC間の賃貸借契約は他人物賃貸借となり、債権的には有効であるもののEに対抗しえない。
(2)Cは、Aが本件越境部分を時効取得(162)したことをEに対し援用し、他人物賃貸借の瑕疵が治癒されたとして賃借権を対抗しうるか。
アCは援用できるか、「当事者」(145)の意義が問題となる
(ア)「当事者」とは、時効取得により直接に利益を得る者をいうと解する
(イ)Cは、Aが時効取得をしていれば自己の賃借権の瑕疵が治癒される関係にあるので、直接に利益を受ける者といえる。よって「当事者」にあたる。
イそして、Aは1985年から「20年間」以上越境部分を占有しており、「所有の意思」「平穏」「公然」については186条1項により推定されるので、Aは時効取得しているので、CはEに対しAの時効取得を援用できる。
イしかし、Aは越境部分につき登記を有さないため、Eに対抗できるのか。Eは時効完成後の譲受人にあたるところ、その処理が問題となる
(ア)時効完成後の譲受人については、実質的に元所有者から譲受人と時効取得者に二重譲渡されたと同視できるので、対抗関係(177条)に立つ。よって登記の先後により処理する
(イ)Aは登記を有さず、Eに対抗することはできない。
よってCの上記主張は認められない
(3)Cは賃借権を時効取得したとして、賃借権をEに対抗すると主張する、認められるか
ア賃借権を時効取得しうるか
(ア)債権は継続的な行使が認められないので、永続した事実状態を観念することができず時効取得が認められないようにも思われる。しかし、賃借権は占有を目的とする債権であるから、継続的な行使が認められる。よって賃借権は163条により時効取得しうる。しかし、所有者保護の観点から、所有者に時効中断の機会を与えることも必要である。そこで、①物の継続的利用という外形的事実が存在し、②それが賃借の意思に基づくということが客観的に表現されている場合には、賃借権を時効取得できると解する
(イ)これを本件についてみるに、Cは1995年8月20日の時点で賃貸借契約を締結し、引渡しを受けているので、①が認められる。
Cは現在に至るまで賃料を支払い続けており、②が認められる。
そして、Cは「20年間」賃借権を行使し続けており、「平穏」「公然」は186条1項によって推定される。よって「自己のためにする意思をもって」を証明すれば、Cは賃借権を時効取得する。
イかかる賃借権を対抗しうるか。Eは時効完成前の譲受人であるところ、かかる場合の処理が問題となる。
(ア)時効完成前の譲受人は、時効取得時に所有者であるから「第三者」ではなく当事者である。よって時効取得者は譲受人に対して登記なくして自己の権利を対抗できる。
(イ)よってCはEに対し、時効取得した賃借権を対抗できる。
以上より、Cの上記主張は認められる
3結論
よって、Eの請求は認められない。
<コメント>
日本語力に問題ありまくり。
「ので」が重なってたりしてて頭悪そうです。
163の「自己のためにする意思をもって」は186・Ⅰによって推定されるのでしょうか、分かりませんでした。
もし仮にCの時効取得の起算点を建物の完成・引渡しに置くのであれば、20年たっていないことになるはずなので、Cが善意無過失を証明できなかった場合は時効取得を主張しえないことになります。この筋だと、建物買取請求権と土地明渡しの同時履行が問題となって、結論は引換給付判決ということになるのかなあと思います。間違ってたら教えてください。