事実と概念

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2017年度 慶應法科大学院 商法

(構成15分・作成15分)

1.問1について

(1)Y社は非公開会社なので、すべての株式について譲渡制限が定められている(2条5号参照)

そして本件でAはCに株式を譲渡し、かかる株式譲渡について取締役会の承認(139条1項)を受けていない。かかる譲渡は有効か

ア株式について譲渡制限をかける趣旨は、会社にとって好ましくないものが株主となることを防ぐことにある。かかる趣旨を実現するには、会社との関係で譲渡を無効にすれば足りる。よって当事者間ではかかる譲渡は有効である。137条1項も譲渡が有効であることを前提としている。

イさらに、会社が株主を譲受人か譲渡人かで選べるとすると濫用の危険があるため、会社は譲渡人を株主として扱う義務を負う。

(2)以上より、本件譲渡の効力は対会社では無効、当事者間では有効となる。

2.問2について

(1)Bは本件株主総会の議題および議案について決議した取締役会(298条1項、4項)につき、招集通知(368条1項)漏れの手続違反があるとして、株主総会決議取消事由(831条1項1号)を主張をすることが考えられる。

しかし、取締役会決議は議決に加わることができる取締役の過半数をもって行われるところ、Bが議決で反対したとしてもAとCで過半数に達するため、Bの招集通知漏れは決議に影響を及ぼさない。そして取締役への招集通知漏れは重大な違法とはいえない。

よって、かかる主張では裁量棄却(831条2項)されうる。

(2)そこで、Bは本件株主総会決議についてBへの招集通知漏れ(299条1項)があったこと、さらに、Cの株式譲渡が対会社では無効であることから、Dの10パーセント株式のみで株主総会決議がなされており、309条1項にも反するとして株主総会決議取消事由(831条1項1号)があることを主張するのではないか。

Bが議決に加わった場合は決議の結果に影響を及ぼすといえる。よって裁量棄却はされず、かかる主張は認められる。

以上