事実と概念

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【再現】慶應法科大学院 憲法

自己評価:D

1設問1

(1)Xらとしては、A市が仏式の葬儀に対し公民館の使用許可や補助金100万円の支出をしたことは89条に違反しているので、取消訴訟を提起すると考えられる。

(2)かかる主張は認められるか。89条は政教分離原則の表れであるから、本件許可や支出が政教分離原則に反しないかを検討する。そこで、いかなる基準によって判断すべきかが問題となる。

(3)そもそも政教分離原則の趣旨は、宗教と国家が結び付き戦争に利用されたことに対する歴史的反省や、少数者の信教の自由を制度的に保障することにある。とすれば、分離の程度は厳格に解するべきと思われる。しかし、福祉国家25条以下)の理念から、国家と宗教の結び付きの一切を断ち切ることは妥当でないため、一定程度の関わりは許容しなければならない。そこで、行為の目的が宗教的意義を有するか否か、その効果が宗教に対する圧迫干渉もしくは援助助長促進となるか否かを基準として判断すべきである。そして、かかる判断においては、一般人の評価や施設の性格などを考慮すべきである。

(4)これを本件についてみるに、まずBは名誉市民であるところ、名誉市民とは、市に関係の深いもので、公共の福祉を増進し、市の発展市民生活の向上又は社会文化の進展に貢献し、その功績が顕著で市民が郷土の誇りとし、かつ、尊敬に値する者である。とすると、名誉市民に宗教的性格は認められない。また、市民葬は共催で行われる合同葬の形式であり市の関わりはその分希薄になっている。よって、本件の使用許可や支出が宗教的意義を有するとは言い難い。

しかし、補助金である100万円については、たしかに一般的に葬儀にはお金がかかることや条例8条で定められているが、一般人から見てその額は多額であると言わざるを得ない。

また、A市の公民館という、宗教的性格の無い公共物であり一般的に多額の使用料がかかる建物を無料で使用させるという行為は、公民館の性格を宗教的なものに歪めるおそれがある。とすれば、本件許可や支出は一般市民に対し仏教が特別であるとの印象を与え、特定の宗教への関心を呼び起こすものであり、仏教以外の市民に圧迫を与える効果がある。

よって、本件許可や支出は政教分離原則および89条に反し違憲である。

2設問2

(1)Fは静謐な宗教環境のもとで故人を偲ぶ自由を侵害され、13条後段に反し違憲であると主張することが考えられる。

(2)まず、かかる自由は13条後段によって保障される。なぜなら、13条後段は人格的生存に必要不可欠な利益を幸福追求権として保障しているところ、静謐な宗教環境のもとで故人を偲ぶことは当人の心の平穏にとって重要な事柄であり、人格的生存に不可欠であるからである。

さらに、A市の葬儀は仏葬であり、クリスチャンであるFにとって父をキリスト教以外の形式により葬儀がなされることは宗教的感情を害し、かかる自由に対する侵害となる。

もっとも、かかる自由は、他者の信教の自由(201項)と隣り合わせのものである。つまり、DEGにも仏式で父を葬儀する自由が宗教的行為の自由として保障されるべきであり、安易にFの国賠の主張を認めることは妥当ではない。よって、Fの主張は認められないと解する。