事実と概念

答案中心にあげています。コメント等頂けるとありがたいです。

2018予備短答

・久しぶりにブログを開いたら、タイトルださいなと思ったので変えました。

伊藤塾採点で180でした。論文がんばります。

・だいぶ前の話ですが、東大ローは足切りされました。たぶんgpa悪かったからかな。

 

2018/06/14追記

短答合格を確認しました。177点になっていました。

【再現】慶應法科大学院 2017 商法

自己評価:B

.1           

Yは競業避止義務につき法令違反しており(35611号、3651項)任務懈怠があるので、4231項の責任を負うのではないか。

(1)Yに任務懈怠があるか

アまず、Yが乙社を設立して大阪市内での販売を開始したことは35611号の「取引」にあたるか

(ア)そもそも、競業避止義務の趣旨は、取締役が会社のノウハウや取引先を利用して事業を行うことを防止することにある。とすれば、「事業の部類に属する取引」とは、会社の取引と目的物・市場・取引先が競合する又は競合しうる取引をいい、「ために」とは計算をいうと解する。

(イ)本件では、甲社は関西での菓子販売製造を検討しており、大阪市内での展開を目指して調査も行っている。とすれば、乙社の大阪市内での菓子販売は甲社の取引と目的物市場取引先が競合しうる取引といえ、「事業の部類に属する取引」といえる。また、Yは乙社の一人株主であるから、乙社の利益はYの利益と同視でき、Yの計算においてかかる取引を行っている。以上より、Yの販売は「取引」にあたる。

イそして、Yは取締役会決議を経ずにかかる取引を行っているので3561項柱書、3651項違反である。なおYは取引後に甲社取締役会の承認を得ているが、承認は事前に要求されているため、かかる承認はYの法令違反を治癒しない。

以上よりYに任務懈怠が認められる。

(2)かかる任務懈怠につきYに少なくとも過失がある。そして、会社の損害は4232項によって1億円と推定される。因果関係も同条により推定される。以上より、かかる推定を覆さない限り、Y4231項の責任を負う。

.問2

(1)本件契約は承認なき競業取引にあたるため、無効ではないか。

アまず、前述のとおり、本件契約は承認なき競業取引(35611号)にあたる。ではその効力はいかに解するべきか

(ア)この点取引安全の観点から、常に無効と解するのは妥当ではない。さらに、相手方が承認の不存在につき悪意有過失であった場合に無効と解しても、相手方が損害を被るだけで会社の救済に繋がらず妥当でない。よって、常に有効であると解する。なお、会社の救済は4231項、2項によって図れる。

(イ)よって、本件契約は有効である。

 

【再現】慶應法科大学院 2017 民訴

自己評価:B+

1.問1

(1)かかる訴えは、800万のうち500万の一部請求棄却後に、残部である300万について請求する訴えである。かかる一部請求棄却後の残部請求は、既判力もしくは信義則によって許されないのではないか。

ア既判力は、訴訟物の存否についておよぶため、一部請求の訴訟物の範囲が問題となる。そして、不意打ち防止の観点から黙示の一部請求の場合には訴訟物は合計額であり、明示の場合には一部が訴訟物であると解する。とすれば、明示の場合には残部請求は既判力によっては遮断されない。

もっとも、一部請求の審理は通常合計額全体についての存否に及ぶため、一部請求について棄却された場合には実質的には全体について不存在と判断されたに等しい。よって、特段の事情ない限り一部請求棄却後の残部請求は信義則により許されないものと解する。

イこれを本件についてみるに、まず、Xの前訴は明示の一部請求であるから既判力によっては遮断されない。そして、請求棄却の判決がなされているため信義則上残部300万の請求は認められないとも思われる。しかし、本件ではXは裁判資料の一部がただちに用意できないというやむを得ない事情のために一部請求をしており、裁判資料がない以上前訴において残部について審理が尽くされたとはいえないため、かかる事情は特段の事情にあたる。よって、信義則によってもYの訴えは遮断されない。

ウ以上より、裁判所は実体判決・実体審理をなすべきである。

2.問2

(1)かかる訴えは将来の給付の訴え(135条)にあたる。そして、本件のようないまだ請求の原因となる法律関係が発生していないような将来の給付の訴えにおいては、①「あらかじめその請求をする必要」のみならず、②請求としての適格性(請求適格)が必要である。

(2)まず、Yがすでに不法占拠をしており、継続するたびに訴えを提起することは訴訟経済や原告の負担から妥当ではない。よって「あらかじめ…必要」が認められる。

(3)では、②請求適格があるか、その判断基準が問題となる。

アこの点、a請求の基礎となる事実関係および法律関係がすでに存在し、その継続が予測されb請求権の内容又は存否について債務者に有利な影響を与える将来における事由があらかじめ明確に予測できる事由に限られ、cかかる事由の発生を請求異議の訴えにおいて証明することによってのみ強制執行を免れることができるという負担を債務者に負わせても格別不当とはいえない場合に請求適格が認められると解する。

イ本件では、Yがすでに土地を不法占拠しており、金属加工という仕事を行っていることからその継続が予測される。(a充足)また、Yに有利な影響を与える事由はYの退去や賃貸借契約の締結といったあらかじめ明確に予測しうる事由に限られる(b充足)さらに、かかる事由の発生の証明は容易であり、Yは自ら不法占拠をしているものであるから自業自得であるため、Yに上記の負担を負わせても格別不当とはいえない(c充足)以上より、請求適格が認められる。

以上より、Xの訴えは適法である。

【再現】慶應法科大学院 2017 刑訴

自己評価:D

.問題1

(1)(1)について

601項の要件を満たした場合には勾留が継続される。

(2)(2)について

勾留をするためには、逮捕前置主義(2071項)が満たされている必要がある。そして、逮捕の効力は人単位ではなく、事件単位で及ぶため、B事件について逮捕前置主義が満たされている必要がある。事件の同一性については、「公訴事実の同一性」(3121項)の有無によって判断されるところ、A方への住居侵入とB方への住居侵入は単一性も認められず、非両立の関係にもないため、「公訴事実の同一性」がなく、事件の同一性が認められない。よってB事件にA事件の逮捕の効力は及ばず、B事件について逮捕前置主義は満たされていないため、B事件について勾留することはできない。

(3)(3)について

かかる検察官面前調書は伝聞証拠にあたり、証拠能力が認められないのではないか。まず、伝聞証拠とは公判廷外における供述を内容とする供述証拠であって、要証事実との関係でその内容の真実性が問題となる証拠をいう。そして、本件調書は公判廷外におけるVの供述を内容とし、Xの暴行についての直接証拠であるからその内容の真実性が問題となる。よって、本件調書は伝聞証拠にあたり、証拠能力が認められない(3201項)また、Xと弁護士が否認していることから同意による証拠能力の付与(327条)も想定できない。よって、32112号の要件を満たした場合にXが犯人であることを証明するための証拠として用いることができる。

2問題2

(2)①について

支店長はブルーレイディスクの所持者であり、任意に提出しているため、領置(221条)として適法である。

(3)②について

アかかる撮影は、無令状検証として令状主義(2181項)に反し違法ではないか、かかる撮影が強制処分にあたるか否かが問題となる。

(ア)強制処分にあたるか否かは、法が強制処分につき定める厳格な手続・要件によって保護する必要がある程度に重要な権利利益の侵害があるか否かによって判断する。

(イ)本件では、公道での撮影であることから、Xのプライバシーの期待が減少しており、重要な権利利益を侵害しているとはいえない。よって強制処分にはあたらない。

イしかし、任意処分であっても適正手続(憲法31条)の要請から限界がある。かかる行為は任意処分として適法か。

(ア)処分の必要性や緊急性を考慮したうえで、具体的状況のもとで相当といえる場合には任意処分として適法であると解する。

(イ)本件では、Xはブルーレイの画像で捜査線上に上がってきた人物であり、ブルーレイ画像の精巧さなどを考えると、その犯人性は強度であり、照合の必要性が高い。そして、強盗殺人事件という極めて凶悪な犯罪であり社会不安を生ぜしめるおそれがあるため一刻も早く犯人を特定しなければならないという緊急性も認められる。たしかに承諾を得ていないためプライバシー侵害が弱いとは言えないが、10分という短時間に限定されていることを考えると、具体的状況のもとで相当であるといえる。以上よりかかる行為は適法である。

 

 

【再現】慶應法科大学院 2017 刑法

1.設問1

(1)Zが財布様のものをすり取った行為につき、窃盗罪(235条)が成立するか。

AZがすり取った時点において死亡していた可能性があるので、「疑わしきは被告人の利益に」の原則から死亡していた場合にも「窃取」にあたる必要がある。そして、「窃取」とは他者の占有にある財物を自己の占有下にその意思に反して移転させることであるところ、Aに占有が認められるか。死者の占有が問題となる

(ア)まず、死者に占有を観念することはできないので、死者に占有は認められないのが原則である。もっとも、殺人犯人との関係においては、殺人から時間的場所的接着性が認められる場合には生前の占有がなお刑法的保護に値すると評価できる。

(イ)これを本件についてみると、ZAの殺人犯人ではなく、XYの暴行と4時間半も離れている。よって生前の占有が刑法的保護に値するとは言えず、Aに占有は認められない。

イ以上より、Zに窃盗罪は成立しない。

(2)上記行為に占有離脱物横領罪(254条)が成立するか。

アまず、Aは死亡していた場合は勿論、生存していた場合にも、意識を失っていることから占有の意思が認められず、「占有を離れた」といえる。

イもっとも、Zは名刺入れを財布と勘違いしているため、故意が認められないのではないか、具体的事実の錯誤が問題となる。

(ア)故意の本質は反規範的人格態度に対する強い道義的非難にあり、規範は構成要件の形で与えられているので、認識と客観が構成要件レベルで合致していれば故意が認められると解する。

(イ)本件では、財布という認識も、名刺入れという客観も「財物」という構成要件レベルで合致しており、故意が認められる。

ウ以上より、上記行為に占有離脱物横領罪が成立する。

(3)ZBに全力で体当たりした行為に傷害致死罪(205条)が成立するか。

結果的加重犯の本質は基本犯に重い結果発生の危険性が内在されていることにある。よって、重い結果について過失は不要であり、基本犯と結果との間に刑法上の因果関係が認められれば足りると解する。

本件では、ZAの顔面という急所を手拳で殴打しており、基本犯から死亡の結果発生への因果関係が認められる。よって上記行為に傷害致死罪が成立する。

2.設問2

(1)まず、Xの殴打行為について暴行罪が成立する、

(2)Yの殴打行為によりAは意識を失い生理的機能が害されているので傷害罪が成立する。

(3)しかし、XYのいずれの暴行からAの死亡結果が生じたか不明であり、利益原則から傷害致死罪の単独犯を成立させることはできないとも思われる。

そこで、XY傷害致死罪の共同正犯(205条、60条)が成立しないか。

ア共同正犯が成立するためには、①共謀の事実②共同実行が必要であると解する

本件ではたしかにXYの暴行を共同実行と評価する余地があるが、YXと面識がなく、XYの存在および暴行について認識しておらず共謀の事実は認められない。

イよって傷害致死罪の共同正犯は成立しない。

(4)では、207条の適用により、XYの暴行と死亡結果への因果関係を推定できないか。

アまず、傷害致死207条を適用しうるか。

この点、207条は二人以上が共同して暴行した場合に因果関係の確定が困難になることに鑑みて因果関係を推定する趣旨の条文である。そして、因果関係の確定の困難さは傷害の場合のみならず致死の場合にも妥当する。よって傷害致死にも207条を適用しうる。

イでは、いかなる要件で207条を適用するべきか。

(ア)この点、①それぞれの暴行が死亡の危険性を有する行為であり②外形的に見て各暴行を共同実行と評価できる、すなわち同一の機会に行われた場合に適用できると解する。

(イ)本件では、XYAの顔面という急所を手拳という殺傷性の高い手段を用いて暴行しており、①を充足する。そして、XYの暴行は時間的場所的に接着しており、外形的には共同実行と評価できる。よって②を充足する。

以上より、207条の適用によりXYの暴行と志望結果への因果関係が推定され、XYそれぞれに単独の傷害致死罪が成立する。